「最近、呼吸が浅い気がする」
「首や肩がいつもこわばっている」
「疲れているのに、なかなか力が抜けない」
「寝てもすっきりしない」
このような身体の変化を感じることはありませんか?
私たちは、毎日当たり前のように呼吸をしています。
しかし、呼吸は単に酸素を取り込むためだけのものではありません。
呼吸には、筋肉や骨格の動き、姿勢、神経系、血液中の二酸化炭素濃度など、さまざまな身体の仕組みが関わっています。
そして、呼吸は自分の意思で一時的に変えることもできる、身体の重要な機能のひとつです。
今回は、機能解剖学や呼吸生理学の視点から、呼吸の仕組みと身体との関係について詳しくご紹介します。
1.呼吸は「肺」だけで行っているわけではありません
まず知っておきたいのは、肺そのものは自力で膨らんだり縮んだりする筋肉ではないということです。
肺は、胸郭(胸の骨格)の中に収まっています。
呼吸をするときには、呼吸に関わる筋肉が胸郭を動かし、その結果として肺に空気が出入りします。
この空気の出入りを「換気」といいます。
呼吸に関わる主な組織
① 横隔膜
横隔膜は、胸腔と腹腔の境界にあるドーム状の筋肉です。
胸郭の下部に位置し、呼吸において中心的な役割を担っています。
息を吸うとき、横隔膜は収縮して下方向へ移動します。
その結果、胸腔内の容積が増え、胸腔内の圧力が低下します。
大気圧との圧力差によって、空気が肺へ入っていきます。
息を吐くときには、安静時であれば横隔膜が弛緩し、元のドーム状に戻る動きなどによって、肺から空気が押し出されます。
つまり、横隔膜は呼吸における主要な吸気筋なのです。
② 肋間筋
肋骨と肋骨の間にある筋肉です。
肋骨の動きを助け、胸郭の拡張や収縮に関わります。
特に外肋間筋などは、息を吸うときの胸郭の動きに重要な役割を果たします。
③ 首や胸部の呼吸補助筋
斜角筋や胸鎖乳突筋などは、呼吸を補助する筋肉として知られています。
安静時の呼吸では、横隔膜などが中心的に働きますが、運動時や呼吸の負担が増えたときには、これらの筋肉の活動が増えることがあります。
首や肩周辺の筋肉は、呼吸にも関わっているのです。
ただし、首や肩がこっているからといって、必ず呼吸補助筋が過剰に働いているとは限りません。
肩こりには、姿勢、筋肉の負担、ストレス、睡眠など、さまざまな要因が関係します。
身体の状態を一つの原因だけで判断しないことが大切です。
【参考:米国国立心肺血液研究所(NHLBI)・呼吸の仕組み】
2.横隔膜は、呼吸と身体の動きをつなぐ重要な筋肉
横隔膜は、単に息を吸うための筋肉ではありません。
その位置や構造から、胸郭と腹部の動きにも関わっています。
横隔膜が動くと、腹部にも変化が起こる
息を吸うとき、横隔膜が収縮して下がると、腹部の内臓が収まっている空間に圧力がかかります。
その結果、腹壁が前方へ動くことがあります。
一方、息を吐くときには、横隔膜が弛緩して上方へ戻っていきます。
このように、呼吸に伴って横隔膜と腹部は連動して動きます。
ただし、腹部が膨らむことだけが正しい呼吸の条件ではありません。
呼吸の動きは、姿勢や胸郭の柔軟性、呼吸の強さなどによっても変化します。
「お腹が膨らまないから、横隔膜が使えていない」と単純に判断することはできません。
横隔膜と体幹の安定性
横隔膜の収縮は、腹腔内の圧力にも影響します。
腹腔内圧は、腹部や背部などの筋肉とともに、体幹の安定性に関わる要素のひとつです。
ただし、体幹の安定性は横隔膜だけで決まるものではありません。
腹筋群、背筋群、骨盤底筋群など、複数の筋肉や神経系の協調によって支えられています。
横隔膜は、呼吸を通して体幹の働きにも関係する筋肉といえるでしょう。
3.「呼吸が浅い」と感じるとき、身体では何が起きている?
日常生活では、
パソコンやスマートフォンを長時間使用する
同じ姿勢で作業を続ける
運動不足で身体を動かす機会が少ない
緊張する場面が続く
疲労やストレスを感じている
このような状況があるかもしれません。
こうした状況では、呼吸の速さや深さ、呼吸に関わる筋肉の活動などが変化することがあります。
呼吸は、状況に応じて変化します
呼吸は、常に一定ではありません。
運動をすれば、身体が必要とする酸素や二酸化炭素の処理量などに応じて、呼吸が変化します。
緊張や不安などによっても、呼吸のパターンが変わることがあります。
また、胸郭や呼吸に関わる筋肉の動きが変化すると、本人が「息を吸いにくい」「呼吸が浅い」と感じる場合もあります。
ただし、「呼吸が浅い」という感覚だけでは、実際の肺の換気量や酸素の状態を判断することはできません。
呼吸の状態を考えるときには、感覚と身体の生理機能を分けて考える必要があります。
胸郭の動きにも注目
息を吸うとき、肋骨はさまざまな方向に動き、胸郭が広がります。
胸郭の動きには、肋骨の形状や関節の構造、呼吸に関わる筋肉などが関係しています。
そのため、呼吸を考えるときには、横隔膜だけでなく、
横隔膜・肋骨・胸椎・胸郭周辺の筋肉などを含めた、全体の動きに目を向けることが大切です。
4.呼吸と自律神経の関係
「深呼吸をすると、少し落ち着く気がする